
< 9.ナス科の自家採取 >
~ナス・トマト・ピーマン・シシトウ・トウガラシ・パプリカ~
ナス科は、ほとんどの品種が枝に付けたまま追熟させてから摘みとるか、やや若く熟した状態で摘み採った場合は、 追熟を重ねて取り出すなどの方法で、成熟した良質なタネを取ることができます。
ナス科種子の概要と自家採取の要点を下記にまとめてみました。
- レ ベ ル
- ★★★☆☆(選定から採取過程を5段階に分けて難易度評価)
- 分 類
- ナス科
- 種子寿命
- 5年(適正保存環境で示す年数なので状態により変化します。)
- 休眠期間
- なし
- 光反応性
- 嫌光性
- 採取要点
- 枝に付けた状態で追熟させること
- 収穫初期は避けて最盛期に自家採取を行うこと
- 熟果を摘果しても追熟または醗酵後にタネ採取すること
- 早熟採取(摘果)しても種は未成熟の可能性があります
- 収穫晩期の自家採取を避けること
- 保存条件
- 遮光(暗所)
- 湿潤厳禁
- 冷所
補足事項
果の熟す程度が外見の色艶で明確に判別できるため、 赤く熟したから自家採取用と早々に摘み取りをしてしまうことが往々にあり、 果が熟しても内包するタネの方が完熟に至らないことがあります。
タネの早期(早熟)採取は、未発芽や発芽不良を起こして発芽率にも影響することから、 完熟に至るまでじくり待ってからタネを取り出します。
収穫最盛期の株であれば強い生命力があり、良質のタネを採取することができるため、 播種後の発芽が揃い易くて発芽後の育苗管理が楽になります。
9-1.ナスの自家採取
ナスは、病害虫の景況がなく着果数が多い生育旺盛な株から、病害虫の影響がなく色形共に整っている果を選んでおきます。
- 1.自家採取果の摘み取りと追熟
表皮の色素変化と委縮が始まる頃に摘み取り暫く日陰干しで乾燥させて水分を抜きます
- 2.果を割る
追熟させた果を、ヘタの中心を軸に半分に割り、それをさらに半分に割り縦4等分に切ります。
- 3.タネの取り出し
果を割り終えたら、水を張ったボウルなどに受けながら、果肉に埋もれているタネを竹串の先などで丁寧に取り出します。
- 4.取り出し後の残渣
取り出し作業に時間が掛かり、作業経過で果汁(灰汁)が滲み出すと共に果肉の酸化が始めるので、 作業は速やかに進めながら取り出し作業を終えておきます。
- 5.残渣をのタネの分別と洗浄
タネが小さくて果肉片も落ちてしまうために、 網目の細かい水切りなど使って取り除き、灰汁が混じるボウルの水を一度捨てます。
- 6.洗浄
取り出した種を細かい網目の器具(笊・水切り・茶小濾し)などで受けながら軽く水洗いします。
- 7.沈殿選別
ボウルに綺麗な水を貼って種を沈め、水面に浮いてくる種を取り除きます。 ※冷水を使い温かい無を使わないほうがいいです。
- 8.乾燥と保存
選別を終えた種を水切りを使って取り出したら、水気を切ってからキッチンペーパーや新聞紙に広げ、風通しの良い日陰で乾燥させます。 乾燥後念のために乾燥剤を一緒に入れて保存します。
ナス科は嫌光性種子が多いので保管状態は冷温はもとより遮光措置も考慮するといいかと思います。
9-2.トマトの自家採取
トマトは、追熟中に害虫に食害されることがあるので、注意しながら着果数が多い生育旺盛な株から、 病害虫の影響がなく色形共に整っている果を選んでおきます。
- 1.自家採取の準備備
半ゲル状になっている果肉のワタ部分からタネの粒を取り出す準備をします。 準備するもの:熟したトマトの実、密閉保存容器(煮沸消毒済みの容器)、器具(ミニ包丁・小スプーン)…要煮沸消毒
- 2.タネの取り出し包丁で実を割り菜間種を半ゲル状のワタごと取り出し、用意した保存瓶に入れてます。
- 3.追熟と醗酵
準備したトマトの実から半ゲル状のにワタごと取り出したタネ種を入れたら、瓶の蓋を閉じて密閉状態にします。
- 4.醗酵分離
常温で保存していれば、夏場だと2~3日程で醗酵が始まるのでタネと分離します。 この処理が大切で、醗酵することによりトマトが持つ抗生物が活性して、 種子が原因の病気(斑点細菌病、斑葉細菌病、カイヨウ病など)に効果があるといわれています。
- 5.果肉残渣とタネの分離
分離した液体とタネを笊や茶濾しなどで濾して、タネだけを取り出します。
- 6.洗浄と選別
タネの表面には細かい毛がたくさん生えているため、取り出した種を軽く水洗いて醗酵した液を洗い落とします。
- 7.乾燥
水洗いを終えたらタネの水気を切り、キッチンペーパーや新聞紙に広げ風通しの良い日陰で乾燥させます。
- 8.保存
乾燥を終えたら密閉容器に乾燥剤と一緒に入れて冷所保管します。
赤く熟していても、種は完熟していないので枝につけたまま追熟させるか、熟した状態で収穫して追熟させます。
9-3.ピーマン・パプリカ・シシトウ・トウガラシの自家採取
ピーマン・パプリカ・シシトウ・トウガラシなどの中空野菜は、表皮に病害虫の影響があると折角の自家採取果が無駄になることがあるので 果を選んだら経過をよく観察しておいて、着果数が多い生育旺盛な株から、病害虫の影響がなく色形共に整っている果を選んでおきます。
- 1.自家採取果の選定
自家採取果を選び出しどの株のどの果を選んだかマーキングするか記録しておきます
- 2.追熟
赤く熟して色素変化をま落ちますが摘みとらずに枝につけたまま追させます。
- 3.害虫被害に遭った追熟果の摘み取り
追熟途中で食害された為に仕方なく摘みとりました。
- 4.追熟果の食害箇所
紀食害された箇所(黄色い丸が込み部分)※拡大は画像をクリック
- 5.食害された自家採取果(莢)
追熟途中であっても種そのものが食害されていなければ問題ないだろうと中を開いてみましたが、 やはりヘタの部分につながった種が多いことから、完熟を待たなければ成熟した種が取れないことが分かります。※拡大は画像をクリック
- 6.食害被害莢からタネを取り出す
つい十区途中だとヘタに種が付いた部分が多く種がはがれていても少量で、 食害のおかげで未成熟なタネも多くなります。
- 7.追熟
追熟途中で害虫の被害に遭うと自家採取にする種が半減するので、 注意深く観察しながら、果全体に張りがなくなり委縮を始めた段階で摘みとります。
- 8.自家採取果の摘みとりと乾燥
追熟させて摘みとった自家採取果はさらに追熟させ、包皮が干からび始めるまで日陰で干しておき、 カサカサに乾燥してから中の種を取り出します。
中空野菜はどれも採取の手順は同じで、トマトやナスのような果肉や果汁が少ないため、乾燥が進んでしまえば洗浄する手間を省けますが、 採取時はタネを濡らさないように注意したほうがいいですね。